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猪名川霊園

観光時間60

説明


猪名川霊園は、大阪市から北へ約40キロに位置する、兵庫県は北摂山系の急斜面にある。ひな壇状に構成された霊園の中央を一本の階段がまっすぐに貫き、その頂点に納骨堂が立っている。この階段のラインこそは、建築の配置を決定づける軸線となった。

「建物の構成としては、すべての機能を一枚の片流れの屋根の下に収め、そのラインが、エントランスから納骨堂を見上げたときの視線に沿うようにしました。休憩棟の部屋はいずれも中庭に開かれている一方、礼拝堂だけは切り離されています。礼拝堂へは専用通路で外から直接入ることもでき、また、中庭から伸びるゆるやかな斜路を上がって到達することもできます。最小限の暖房と照明しかない、無垢で静謐なこの部屋は、宗派を問わない純粋な祈りの場です。礼拝堂を訪れた人々にとっては、庭の両側から間接的に差し込む自然光が頼りとなり、ここで外界から遮断されるにつれ、刻々と変化する光や四季の移り変わりが刻む自然のリズムへと、感覚が研ぎ澄まされていきます。庭はいずれも、日本の野山の色合いと質感を思い浮かべながらつくったもので、精選した種々の山野草や低木を緻密に配しています。

……

敷地の両極を結ぶ軸線ともなっている急斜面の階段の真ん中を、山からの水が建物に向かって流れてきます。礼拝堂の脇に位置する、階段の麓の部分に来ると水は速度を緩めて水盤にいったん貯まり、そこから新しい地下水路に落ちて、すぐそばの小川へと向かいます。」

ーーデイヴィッド・チッパーフィールド